集落丸山の事業と同じ時期、一般社団法人ノオトを設立した2009年頃から構想を進めていたのが、分散型ホテル「篠山城下町ホテルNIPPONIA」事業です。
篠山の城下町全体をホテルに見立て、ホテル機能を町に分散配置する、というこの構想は、当時とても珍しく、またこの後全国に広がるNIPPONIA事業を大きく推進させていく転換点となりました。
2009年以前より、一般社団法人ノオトとして、篠山城下町内の空き家となった町家を改修し、ギャラリーやカフェ、雑貨店、工房、レストランなどの整備に取り組んでいましたが、宿泊施設には着手できていませんでした。
その当時、分散型ホテルは法律上ハードルが高く実現は困難でした。けれど、この構想を形にするために、2013年に県の国家戦略特区に事業提案を行い、2014年に特区事業者として認定を受け、そして2015年の10月、「篠山城下町ホテルNIPPONIA」が開業を迎えました。
その後、2017年に旅館業法が改正され、今では特区でなくても分散型ホテルの事業展開が可能となっています。
2015年に4棟11室でオープンし、少しずつ増室して2022年現在は8棟20室の分散型ホテルとなっています。
空き家となって荒れている古民家(負の遺産)を改修して活用することで「地域資源」となる…。
この価値反転が町に活力をもたらします。ひとつひとつの現場を丁寧に造っていくことで町が少しずつ変化していきました。
時間を湛えた空間はクリエイティブな人材(料理人、工芸作家、デザイナーといった現在の職人たち)を呼び込みます。彼らは、その土地に基づいて、その土地に新しい価値を持ち込み、新しい風を吹かせます。
建築基準法や旅館業法など法律の壁と10年に渡って対峙してきました。仮に、法の抜け道を探して擦り抜け、一つの構想を形にできたとしても、制度自体は変えられません。社会に良き改革を起こすには、正面突破(王道)が必要です。それが10年かかっても、やり遂げることに大きな意味がります。
「篠山城下町ホテルNIPPONIA」の1期開発は、ノオト・NOTEが手掛けた事業の中で初めて、ファンドと銀行融資の民間資金のみで資金調達を行った事業です。この事業によって、地方部の古民家再生が事業として成立できることを世の中に広く示すことができました。
篠山城下町ホテルNIPPONIA
篠山城下町に点在する宿泊施設としました。ご予約も上記webサイトから行っていただけます。
銀行の頭取の邸宅だった明治期の建物です。お住いされていた6代目のT氏と5年間ご相談を続け、最終的にお譲りいただきました。他の事業者に売却すると屋敷が潰されてしまうことは6代目も理解されていました。
篠山城下町ホテルNIPPONIAの旗艦棟(客室5室+レストラン)で、分散型ホテルのフロントもここにあります。
篠山生まれで現在は神戸在住のNさんからお譲りいただいた明治期の町家です。旧山陰街道に面した土間は厨房付きのチャレンジショップ、その奥に3室の客室があります。チャレンジショップでは現在、珈琲豆「誠」が営業しています。
近隣に在住のNさんからお借りしている江戸末期の町家で、篠山のNIPPONIAの中では最も築年数が古い建物です。奥に長い町家を2棟の客室に分けています。伝統的建造物群保存地区である河原町の東端に位置しています。
世界のプロダクトデザイナー喜多俊之さんが空間デザインを行なって、2016年に追加した1室です。
喜多さんが関わる伝統工芸品を展示販売する「篠山ギャラリーKITA’S」の2階にその客室はあります。
過去に写真屋・呉服屋などが入居しており、その後、虚無僧が住んでいました。一棟貸しにて提供しています。
大正期に建造された民家で、前ノオト代表がこの建物を守るために自ら数年の間居住していました。篠山城の堀の向かいに位置し、篠山城跡から一番近い客室です。
ペットと一緒にお泊りいただけます。