01 泥臭く続ける。地域の暮らしと文化を繋ぐため(株)NOTE代表取締役 藤原 岳史

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「なつかしくて あたらしい 日本の暮らしをつくる」との考えを基に、兵庫県丹波篠山市を拠点にまちづくりを続けるNOTE(ノオト)。活動開始から10年が経ち、この考えに共感して全国各地で歴史資源を生かしたまちづくりが広がってきました。携わる仲間は、IT畑出身者や元公務員、元金融マン、元ホテルマンなど多様な人生経験を積んだユニークな面々。どんな経験からこの活動に共感し、それぞれの街で根を張ってまちづくりをしているのか。
まずはNOTEの活動を初期から作ってきた主要メンバーである株式会社NOTEの藤原岳史・代表取締役社長に語ってもらいます。

【プロフィール】
株式会社NOTE 代表取締役社長 藤原岳史
1974年 生まれ
丹波篠山市 出身


―活動のきっかけは?

篠山で生まれ育って、高校卒業後は田舎を出たいという典型的な地方の若者でした。大学を卒業した後は、ITベンチャーに勤め、東京と大阪で働いていました。田舎がいやで篠山から出たけれど、都市部で働くにつれて田舎の良さを知ってもらえる事業をやりたい気持ちが芽生えていました。
2007年、勤めていたITベンチャーの上場をきっかけに、取引先企業を地域別で見てみると、ほぼ東京と大阪でした。ITの仕事ってどこでもできると言いながら、結局は都市部の仕事しかしてないことに気が付いた。会社の上場をきっかけに、篠山に帰って独立することを考え始めました。それで篠山でできる事業計画を作って、地元の経営者に相談を持って行きました。


―行動が早いですね

すると、「おもろいこと考えとるな」と。それだったら会った方がいいと紹介されたのが、当時、篠山市で副市長を務めていた金野さん(一般社団法人ノオトの初代代表・金野幸雄)でした。
会いに行くと、すごく話しが盛り上がって、一般社団法人ノオトの立ち上げ時から携わることになり、情報発信・戦略を担うことになりました。
まずは経営理念をまとめようと、当時の主なメンバーに集まってもらい、やりたい事業を挙げてもらった。すると少子高齢化や廃校、空き家、担い手不足、交通機関など日本が抱える課題そのものでした。

 

■「これではまちづくりは継続できない」。常に抱える課題認識

 

―地方は日本の課題の縮図ですね

ノオトはスタート時、古民家再生に特に重きを置いていたわけではなくて、地域の課題を解決するまちづくりをやろうと言っていた。当時は古民家再生はやりたいことの一つでした。
2009年、篠山の農村エリアで地元住民と一緒に、一棟貸し宿「集落丸山」を開業しました。集落の住民がおもてなしをする宿です。この時、古民家に「暮らすように泊まる。1日の住民になる」という発想の発見がありました。

丸山での宿泊事業の後、篠山で古民家を改修し、サブリースをして店舗をやりたい若手事業者を誘致するという流れで、地域を活性化する取り組みを十数件積み重ねました。
古民家の活用は、まちづくりの鍵になる。そして、地域の生業や暮らしの再生に繋がるという手応えを感じ始めていました。古民家は、改修すると地元の工務店や大工さん、左官屋さんに仕事ができます。改修工事が継続して行われれば、地域に古民家の「修復産業」ができ、技術の継承にも寄与します。そして直した古民家を活用してお店やホテルができると、観光客が訪れて地域での消費額が増えます。

―いいこと尽くしですね

しかし、当時のやり方では古民家活用もまちづくりも継続性に課題を感じていました。当時、ノオトがしていたサブリース方式は、ノオトが一手に負担を負っていたし、金野さんも私も古民家活用については無給のボランティア。多くの地域でまちづくりがなかなか続かないのは、ボランティアベースで、誰かの犠牲の上で成り立っていることが多いからだと思います。資金とマンパワーが継続的に確保できる仕組みが必要。これがないと産業にならないという課題認識がありました。

 

■「社会性」と「継続するための収益性」。そのバランスが重要

 

―あまりに大きな壁に普通だと諦めてしまいそうです…

実践を重ねながら、模索を続けました。
ちょうどその頃、兵庫県朝来市が所有する旧木村酒造場を複合施設にする話が持ち上がり、ノオトが活用提案型の指定管理を受けることになりました。そこで、一般的に商業施設を開発する際の手法であるアセットマネジメントの考え方を取り入れ、ホテル運営はプロの運営事業者さんにお願いをしました。この時に、今のノオトの事業スキームの骨格ができました。
次の転換点は2015年に開業した初の分散型ホテル「篠山城下町ホテルNIPPONIA」です。地域経済活性化支援機構(REVIC)と投資ファンドを立ち上げるなどして、ほとんど民間資金で改修できました。また法律の面では、国家戦略特区の規制緩和を受けることで、分散型のホテルが実現しました。

このように、地域の資源を生かした事業を組み立てる時、都市で展開されているビジネスモデルがとても参考になりました。それまで対都市と思っていましたが、都市は都市で、地域は地域でそれぞれに良いところがある。これまで地域に合った事業の作り方のモデルがなかっただけなのだと思います。

―これまでは地方から都市に出てビジネスを作るのがもっぱらで、その逆はまだまだ少ないですね

しかし、地域でのまちづくりは、もちろんですが都市部の開発とは違います。
社会的意義や志が一番重要なのは言うまでもありません。一方で、志だけで収益性がないと継続し、さらに事業継承することは難しくなります。かといって、営利を追求しすぎると、地域のコミュニティや暮らしを壊しかねません。

「社会的意義」と「継続するための収益性」、そして「地域とのコミュニケーション」のバランスがとても重要だと感じています。正しい答えは必ずしも一つではないですが、常にこれらのよいバランスを模索し続けることが、まちづくりには欠かせない過程だと思います。

 

■リゾート開発をやりたいのではない。
    目指すのは、地域の暮らしと文化の継承。そのための仕組みづくり

 

―今後、NOTEが目指す方向は?

今は古民家の活用用途として、高単価のホテルが多いので、高級ホテルやリゾート開発をやっているように思われがちですが、誤解を恐れずに言うなら、高級ホテルが作りたいわけではありません。ましてや農村リゾートを作りたいわけでもありません。
NOTEが目指しているのは、地域の資源を活用して、持続可能な事業をつくり、地域を後世に繋いでいくこと。具体的には、歴史的な建物の活用が起点になっていますが、一番大事な資源は、そのまちの暮らしと、暮らしから生まれた文化。そしてそれを引き継いでいる人です。地域にリスクを負ってでもまちづくりをやろうという人がいて、NOTEに手伝ってということがあれば、その地域で一緒に尽力したいと思っています。

今はNIPPONIAが全国に広がり、サポートしている地域がここ2年ほどで各地に増えました。携わる地域が増えたことに伴って、一緒に働くメンバーも増えてきました。ノオトが設立して10年ほどは、フリーランスの集まりの‘野武士’集団だったけれど、今後は会社として組織を充実していきたい。いろいろな地域での経験が積み重なって、成功も失敗も多くの事例が溜まってきている。まちに思いのある人が負担を抱え、ある意味犠牲になってやるまちづくりではなくて、ちゃんと仕事として生きていけるようにしていきたい。まちづくりを、なりたい仕事、職業にしていきたいと考えています。

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第2回目のバトンは(一社)ノオト代表理事 伊藤清花に続きます。

井垣 和子

兵庫県姫路市で生まれ育つ。同県の地方紙である神戸新聞社に入社し、地方支社総局や経済部などで街ダネから農林水産業、地域経済などを取材。2013年に篠山支局に配属となる。篠山で古民家の活用を展開していたノオトを継続的に取材したことをきっかけに、2018年に同新聞社から一般社団法人ノオトに出向。同県福崎町でエリアマネージャーを務め、取材する側からまちづくりをする当事者の立場となる。