まちづくりの隙間から NOTE代表の徒然ノートvol.5 切っても切れない開発とオペレーションの話(前編)

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みなさん、こんにちは!
NOTEの活動について、いつも応援ありがとうございます。
さて、今回からは2回続けてタイトルにあるように「オペレーション」の話をしたいと思います。


まちづくり事業において、「開発(デベロップメント)」と「運営(オペレーション)」は、いわば車の両輪であり、その密接な関係は「切っても切れない」ものだと言えます。
しかし、事業を成功させ、特に地域に持続的な価値をもたらすためには、この
「切っても切れない」関係性を、事業上は「意図的に切り分け」、それぞれの専門性を追求することが重要になります。

開発と運営をきっちり分ける意義

株式会社NOTEが展開するNIPPONIA事業においても、この「開発」と「運営」の役割分担は、事業スキームの重要な特徴の一つです。

地方で古民家や歴史的建築物を活用した事業を行う際、物件の調達や改修、資金調達といった開発フェーズには、多大な労力と時間を要します。NIPPONIAの事業スキームでは、まちづくり開発会社(地域に特化した新たな事業体)が、物件の集約、エリアデザイン(計画)、そして開発と運営のリスク分散を担います。

 

専門性とリスクの分散

NIPPONIA型の古民家活用スキームの最大の特徴は、「物件の開発と運営のリスクを分散させる」ことで、資金調達のハードルを下げ、経済循環を生み出す点にあります。

しかしそもそも、「開発」と「運営」を分けない場合、どのような事態が考えられるでしょうか?

通常、開発と運営を一体として行う場合、どんな事業であっても最初の2〜3年は赤字が続く「産みの苦しみ」の時期があります。4年目以降にようやく黒字化し、初期の赤字を解消しながら成長軌道に乗る。そして、黒字が安定したさらに数年後に、ようやく追加投資をして事業を拡大していく……というのが一般的なサイクルです。当然、赤字の間は銀行からの追加融資も期待できません。

一民間企業の事業として見れば、これは当たり前の話であり問題はありません。しかし、このサイクルを「まちづくり」という時間軸に当てはめると、うまくいかないのです。

 

「時間軸のミスマッチ」を解消するリスク分散戦略

一般的な民間企業の運営計画は、長期といえどもせいぜい5年〜10年であり、投資回収の視座も地域の歴史的スパンに比べればあまりに短期的です。

  • 1〜3年: 累積赤字期間
  • 3〜5年: 単年度黒字化・累積赤字の解消
  • 5〜10年: 投資回収(投下資本の2〜5倍のリターン)

 

しかし、500年以上の歴史を持つ地域が未来を描くとき、その単位は少なくとも100年(3〜4世代分)となります。つまり、まちづくりには民間企業のサイクルの10倍以上の長い視座が必要不可欠なのです。 極端な話をすれば、「30年間赤字であっても、50年後に解消し、100年後に地域全体で利益が出ていればよい」という、インフラ投資に近い超長期的な視点です。これを短期利益を求める一民間企業単体で担うのは、構造的に困難です。

だからこそ、「開発(所有)」と「オペレーション(運営)」を明確に切り分けます。 数百年続いてきた地域の歴史を、一事業者のわずか数年の経営不振を理由に途絶えさせるわけにはいきません。機能を分離しリスクを分散させることこそが、地域の100年先を守る持続可能性(サステナビリティ)の担保になると考えています。

 

衰退スピードに負けない開発

人口減少が進む地域では、空き家の増加は待ったなしの状況です。「4〜5年に一度、一棟を再生する」という悠長なペースでは、地域の荒廃スピードに追いつかず、まち全体にインパクトを与えることも、十分な経済波及効果を生み出すこともできません。

1期の開発を終えてから次の開発まで数年の空白が空けば、その間に協力してくれた地域住民の方や所有者の方も高齢化が進みます。せっかく高まった「まちづくり」の機運も、その空白期間に冷めてなくなってしまうのです。

そこで重要になるのが、まちを面でとらえた「分散型開発」という考え方です。

「開発」する会社と「運営」する会社を分けることによって、双方が担うリスクは分散されます。特に「開発」を行う会社にとっては、テナント(運営者)が決まり家賃収入が確定した段階でリスクが大幅に軽減されるため、4年を待たずして次の物件開発へ着手することが可能になります。

また、運営事業者がコロナ禍など何かしらの事情により事業継続が困難になった場合、「開発」と「運営」が別れていることによりリスクを最小限にできる事の他、対策できる選択肢を広げて考えることも可能となります。

少し専門的な話になりますが、事業における「開発する法人」「運営する法人」二つに役割を分担することで、それぞれの財務諸表(損益計算書: PL / 貸借対照表: BS)にも特徴が生まれ、異なる役割を担わせることが可能になります。

  • 開発する法人: 主に投資的支出(開発費や建築・設備投資など)が先行し、その費用が貸借対照表(BS)に資産として計上される傾向が強くなります。その大半は固定資産に計上され、長期負債(銀行借入)や純資産(株・資本金等)と中長期的にバランスさせる事が可能です。
  • 運営する法人: 主に開発されたものを活用して事業を展開するため、売上営業利益が中心となり、損益計算書(PL)に収益性が明確に表れます。貸借対照表(BS)は比較的シンプルになることが多いです。

 

このように役割を分けることで、例えば、開発法人には成長性を、運営法人には収益性・安定性を重視した財務戦略をとるなど、戦略的な経営がしやすくなります。

少し難しい話になってしまいましたね。シンプルに示すと以下のイメージとなります。

  • 開発する法人: 不動産を抱える
  • 運営する法人: 人的資源を抱える

 

ということで、
「開発」する法人は、社会情勢や運営事業者の状況を見ながら、「今回は1室だけ」「次は5室まとめて」といったように、状況に合わせて柔軟に開発サイズを調整できる点も、分散型開発(分散型ホテル)の大きな特徴です。加えて、「開発」する法人は、必ずしも客室の追加開発に限らず、飲食店や物販などの店舗を増やすことも可能です。

「運営」する法人は、不動産リスクを抱える事なく、地域ポテンシャル(集客状況)を見ながら、最適な客室数で運営する事が可能となります。

具体的なそれぞれの役割は以下の通りです。

1.開発(まちづくり開発会社やNOTE)

  • まちづくり開発会社は、物件の賃借や買取を行い集約し、エリア全体をデザイン(計画)します。
  • NOTEは、このまちづくり開発会社に対して伴走支援を行い、初期調査から事業計画策定、資金調達支援、建築設計業務、リーシング支援などの「開発マネジメント支援」を行います。
  • 外部からの活動は見えにくいものの、地域の大切な資産を未来へ残すという、まちづくりにおいて重要な役割を担います。

 

2.運営(オペレーター/テナント事業者)

  • オペレーターは宿泊施設の運営を任され、その他の飲食店や物販店といったテナント事業者においても、まちなかでの多様な滞在コンテンツを提供します。
  • NIPPONIA事業では、地域運営型(地域住民を雇用し直接運営)や、プロの事業者に運営を任せるサブリース形態などが採用されています。
  • 例えば、我々のフラッグシップでもある「篠山城下町ホテル NIPPONIA」では、NOTEが開発を行い、宿泊業務の運営は外部事業者が担うという分業体制が取られています。

 

このように役割を分けることで、開発側は地域の課題解決と長期的なビジョンに集中し、運営側は宿泊施設やテナントとしての収益性やサービスの質に集中することができます。

もし特定の法人が全てを所有・運営し、短期的な収益・利益主義に偏ってしまうと、撤退後に廃墟化・空き家化する可能性が高くなり、まちづくりという観点においてはデメリットとなります。だからこそ、事業上はきっちりと役割を分けることが、地域の持続性を担保する上での合理的な仕組みとなるのです。

「NIPPONIA」では、オペレーションだけでなく、まちづくり開発に携わる人々にも等しく光を当てる事を大切にしています。

 

前半はここまで。
後半は、NIPPONIAが目指す運営の在り方についてお伝えします!

藤原 岳史

株式会社NOTE 代表取締役
一般社団法人ノオト 代表理事
1974年兵庫県生まれ。大学卒業後、食品会社に勤務。その後、米国に1年間留学し、情報システムを学ぶ。2001年より東京・大阪のIT企業に勤務し、マーケティングやコンサルティングに携わる。2009年、地元の丹波篠山に戻り、一般社団法人ノオトに参加。2016年、株式会社NOTEを創業。以降、「篠山城下町ホテルNIPPONIA」を皮切りに、北海道から沖縄まで全国30地域以上に展開。