兵庫県・丹波篠山市の中でも標高の高い場所に位置する後川新田(しつかわしんでん)、原集落。奈良時代には既に開墾されていたという記録が残っているほど歴史が古い原集落は、古くから良質な米どころとして知られ、現在でも集落の方が田畑を美しく管理されています。
そんな原集落で、朽ちかけた一棟の大きな茅葺古民家「天空農園」を再生するプロジェクトが始まったのは2010年。集落内外の様々な協力で再生された「天空農園」は、大きく立派な茅葺古民家と集落の原風景を見に、多くの方が訪れる場所に生まれ変わります。しかし、集落活性化に意気込む最中の2014年の春、火災により焼失してしまいました。
集落の、そして関わる多くの方達が深く悲しむ出来事で、改めて古民家における火災の恐ろしさを実感しました。火災から5年が経った2019年、集落の方達と共にもう一度「天空農園」が伝えてきた昔ながらの日本の暮らしや風景を次世代に届けるため、「天空農園」の再建プロジェクトがスタート。2020年に新しい「天空農園」は完成しました。
「NIPPONIA 後川 天空農園」は、NIPPONIA事業の中で初めて、新築を拠点とした事業になります。「この集落の景観、暮らし、文化を未来に伝えていきたい」。かつての「天空農園」に関わっていた人々が、そんな想いの旗の下にもう一度集まり再出発します。
この豊かな里山の原風景と紡ぐ人の想いそのものが「NIPPONIA」。
建物が変わっても、人の想いは変わることなく紡がれていく。
ここ後川はそんな地域です。
かつての「天空農園」では、奥戸さんや囲炉裏、薪で炊ける五右衛門風呂など、昔ながらの日本の暮らしがありました。訪れた方々が、人の手で守られてきた美しい集落の自然景観や多様な動植物に触れる事で、日本が経済発展の中で忘れてしまった豊かさを感じられる場所にしたいと運営をしていました。「NIPPONIA 後川 天空農園」はその想いを継ぎ、今も変わらない里山の景観や集落の人たちとの会話を通じて「山村の暮らしの豊かさ」を感じられる場所にしたいと思っています。
新しい「天空農園」はあえて古民家に寄せず、古民家の要素を所々で感じられるような建物にしています。例えば、開放感のある玄関は以前の天空農園の土間のように。みんなが集まりたくなる囲炉裏を思わせるカウンター、半露天の檜風呂、茶畑が美しく見える洋室や集落の景観を望む畳の空間。そこでどのように過ごしてもらうのか、を大事に考えて設計した空間になっています。
「NIPPONIA 後川 天空農園」のある原集落は川の最上流に位置するため、ホタルやアカハライモリ、モリアオガエルなどの多様な生き物が生息し、またそんな生き物が暮らす豊かな自然環境が変わることなく残っている地域です。
「NIPPONIA 後川 天空農園」は、そんな集落の環境を存分に感じてもらえるような建物になっています。稲を揺らす風が土間を通り抜けるのを感じ、夜はウッドデッキで満天の星空を見上げ、四季の山々を眺めながら食事をする。
お友達と、ご家族と、もしくは贅沢に一人だけで、非日常に浸れる宿です。