奈良盆地のほぼ中央に位置する田原本町は、豊かな水と土壌に恵まれ遠い昔から農耕が営まれてきた古い古い土地です。そんな田原本町にあるのが奈良県最古の醤油の蔵元、1689年に創業した「マルト醤油」。戦前は皇族に醤油を献上していた記録が残っているほど由緒のある醤油蔵です。
実は物資不足が原因で一度その歴史に幕を降ろした「マルト醤油」ですが、2011年に18代目当主となる木村浩幸氏により70年ぶりに醤油の醸造が復活しました。醤油醸造の復活と共に当時の醤油蔵を改修し、奈良の醸造文化を感じられる宿として再生しました。
現代に復活したマルト醤油は、なんと70年前に一度途絶えてしまったマルト醤油とほぼ同じ醤油なのです。というのも、醤油造りに不可欠な酵母が醸造蔵にずっと生き続けており、更に書庫からマルト醤油の造り方を記した文書が見つかったため、代々造られていたマルト醤油を再現することができたのです。
醤油醸造の販売は、2022年1月からですが、ご宿泊者の方には地元の材料を使って天然醸造でじっくりと造り上げられた醤油をお楽しみ頂けますので、ぜひご賞味ください。
「NIPPONIA 田原本マルト醤油」は、当主が暮らしていた母屋、蔵人たちが寝泊まりしていた蔵、原材料庫などを元の姿を大きく変えずに客室やレストランとして再生しています。皇族をもてなすために作られた部屋などもそのまま残されており、当時の厳かな空気を感じ取ることができます。
また、母屋の隣にある醸造蔵では醤油の醸造が行われているため、滞在中は酵母たちの息遣いを身近に感じながら身も心も醸造の文化に浸ることができます。
NIPPONIA 田原本 マルト醤油
マルト醤油の醸造蔵、母屋として使われていた古民家を宿泊施設としました。ご予約も上記webサイトから行っていただけます。
材料蔵、母屋、府庫(財物・書物などを保管する蔵)を改修した全7室の客室にはそれぞれ建物の由来や醤油の醸造に関わる名前が付けられています。
蔵人たちが過ごした同じ空間に滞在し、醸造したての醤油を使った朝食を食べる時間は、他ではできない特別な体験です。