NIPPONIA協会主催「第2回 NIPPONIAサミット」が開催されました。

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NIPPONIA協会が主催する「第2回 NIPPONIAサミット」が2020年11月18日(水)に福岡にて開催されました。

2回目となる今年のサミットのテーマは「サステナブル社会と地域の未来」。
アフターコロナの社会を見据え、「サステナブルな地域の発展とはなにか」という観点から地域での活動について考えました。当日はオンラインでのご参加も含め約170名の方たちにご参加いただきました。
以下、午前の第1部、午後の第2部の様子を順にご紹介します。

第1部では岐阜県飛騨古川で「SATOYAMA EXPERIENCE」などの事業を手掛ける(株)美ら地球CEOの山田 拓氏と、現在23地域で展開しているNIPPONIA地域の中から、島根県出雲市より(一社)木綿街道振興会専務理事 兼 事務局長・平井氏、愛媛県大洲市より(一社)キタ・マネジメント事務局次長・村中氏、熊本県甲佐町より(一社)パレット理事・米原氏と、それぞれの地域でNIPPONIA事業に取り組んでいる代表の方3名に登壇いただき自身の地域での取組みについてお話しいただきました。
(※登壇いただいた方の詳細なプロフィールはこちらからご確認いただけます。)

冒頭は山田氏の「持続可能な観光とは」という投げかけから始まりました。2013年にグッドデザイン賞を受賞した飛騨高山サイクリングでは、4つのHAPPY(旅人、地元企業、住民、若者それぞれのHAPPY)を創り出すことを意識している、というお話から、そこに持続可能性という観点を加え、これからは「地域のHAPPY」と「地球のHAPPY」までを視野に、観光を受け入れる地域側がどのような観光スタイルを創り出すのか、というお話をしていただきました。

「住んでよし、訪れてよし、魅力のある地域には人が集うと思います。魅力の源泉は地域によって違うと思いますが、魅力があればくる。持続可能性を求められる地域において、NIPPONIAの活動は求められる活動であると思いませんか。」という山田氏の投げかけからサミットが始まった。

観光資源の一つでもある「体験」とは何か、について山田氏より。「食う・寝る・遊ぶという中で、体験というのは遊びの一部と思われているがそれが唯一では無い。遊びの一部がEXPERIENCEではなく、訪れること全てがEXPERIENCEだと思っています。NIPPONIAの場合、泊まること自体がEXPERIENCE。畳に寝る、部屋で出される食事、全てがEXPERIENCEです。食う・寝る・遊ぶ・買う全体でトータルデザインをする必要がある。」

長年、出雲平田の町づくりに取り組んでいる平井氏より「地域のHAPPY」を感じられるお話をしていただいた。「NIPPONIAが来て嬉しかったことは、通りの景観が全く変わらなかったことです。…私たちは町並みに敬意を払うべきだと考え、今までまちづくりを行なってきました。保存の制度がない平田は住民の心がけで維持されています。それに寄り添ってくれたのだと思っています。」

元々市の職員である村中氏からは市と金融機関が連携して進めている大洲の町づくりについてお話いただいた。「大洲の城下町では建物が一気に取り壊されようとしていて、我々としてはそれを防ぐために行いました。…地域を活性化させるという視点で、民間投資の促進を行政がリードしながら取り組みを進めている。だから民間が動きやすい環境が作られる。」

サミット開催の1週間前にNIPPONIA施設がオープンした甲佐町より米原氏。甲佐の目指す観光についてお話いただいた。「甲佐の住人と親しい繋がりができ、それが甲佐にくるモチベーションになること、また来ますというやりとりが生まれることが僕らの目指すところです。地域と来た人のつなぎ役というのがNIPPONIAの役目です。…観光地ではない甲佐町なので、関光町づくりを目指しています。」

 

続く第2部では、ファシリテーターを山田 拓氏にお願いし、第1部で登壇いただいた3名の代表の方たちと「サステナブル社会」をテーマに、それぞれの地域がどのようにNIPPONIA事業を実現させていったのかを紐解くパネルディスカッションを行いました。実現までの苦労、NIPPONIA事業による地域側の変化や官民連携を実現するための抑え処など、中身の濃い90分となりました。

地域住民が宿泊施設を運営するスタイルでは、毎食、高級ホテルのような食事を提供することは大変だ。甲佐では地元の老舗定食屋さんが朝食を提供してくれる。「NIPPONIAと一口に言っても地域ごとにスタイルが異なるのも良いところだと思いますので、甲佐は甲佐らしくやっていければいいかと思います。」と米原氏。地域側の負担が大きくなりすぎると持続はできない。

官民連携でまちづくりを進めるためのポイントについて村中氏は「一番大事なことは責任者を据えること。もう一つは、将来のために投資するという視点で進めること。」と語る。

NIPPONIAの施設が開業してからも当然課題は生じる。「公共の空間とプライベートの空間とその間の空間、地域住民と外から来た方ではそうした空間に対する考え方も違って、すれ違うとお互い不幸になる。地域の考え方をどう伝えていくかが次の課題です。」と平井氏。

バリューマネジメント株式会社 代表取締役の他力野氏による閉会挨拶。「NIPPONIAの事業が動き出すきっかけは、「自分たちの地域を残したい」というそれぞれの地域の人の思い。」始めること、それを続けていくこと、全て人の「思い」が無ければ実現できない。

改めて、当日お越しいただいた方、ご登壇いただいた方にお礼申し上げます。ご参加された方にとって持ち帰るものが少しでも得られた場であれば嬉しい限りです。

 

小栗 瑞紀

生まれも育ちも神奈川県横浜市。就職を機に篠山へ移住し、人生初の田舎暮らしを満喫中。株式会社NOTEに勤務。古民家が好き。