NIPPONIA地域ガイドブログ02 丹波篠山田植え記

NIPPONIAのある地域のお店やお気に入りスポット、イベント等を紹介するブログです。
第2回目は、兵庫県丹波篠山市の城下町から車で約20分、不来坂(このさか)集落での田植え体験について弊社スタッフが紹介します!
(難読地名すぎる…)

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集落人口が2倍になった日

 

こんにちは。(株)NOTEの藤野です。

GW真っただ中の5月1日、この日訪れたのは、丹波篠山市西部にある山々に囲まれた不来坂集落。ここでは、農村や豊かな里山環境を未来へつなぐ「ミチのムコウ」プロジェクトが有志の方々の手によって進められています。
今回は、本プロジェクトの今年最初の活動「100人で呑む名前はまだない日本酒」を育てるために大切な手植えによる田植え作業に参加しました。

早朝から降り始めた雨が残るなか集落を訪れると、すでに田植え長靴を履いた若い人たちが公民館に集まって談笑している様子が目に飛び込んできました。
参加者のうちほとんどの方が田植えを経験するのが初めてでワクワクしている様子。小学生のお子様を伴ったファミリーも多く参加されていました。

「今この部屋に集まっている人数は、だいたいこの集落の人口と同じくらいなんです。」

プロジェクトリーダーの吉良佳晃(きらよしてる)さんがそう語ると、

「ええ!」

「そうなんだ!」

と、どよめきが起こりました。

参加者の方々が感じた驚きの裏にあるのは、地域社会が直面している人口減少や担い手不足の課題がより身近に、自分事として感じ取られた瞬間だったのかもしれません。

当たり前のことかもしれませんが、田んぼでお米を作るためには水が必要です。しかし、元々そこに水や水路、圃場があったわけではありません。
先人は土地の風土を理解し、傾斜を利用しながら広く圃場に水を行き渡らせるよう工夫し、デコボコだった土地を平らにして農業を営んできました。
今となってはどこでも見かける水路や田んぼも、先人が生きるために生み出した知恵の結晶であることを学び、彼らの暮らしぶりを想像せずとも苦労が伝わってきます。

オリエンテーションを終えたあと、雨が降り少しひんやりとした空気の中、田植え作業を行う圃場へ移動します。私は田植え長靴を履いていましたが、サンダルを履いている方、靴下を重ね履きしている方など様々です。

苗は3~5本で一株として植えていきます。これよりも多く植えてしまうと発育過程で苗同士が生育を阻害し合うため収穫量に影響が出てしまいます。
そして手で植えるときに注意しないといけないのが植付けの深さです。水が張られた田んぼは上から水、トロトロ層、土層の順番で構成されています。
植え付けが浅くトロトロの層までしか植わっていないと、風が吹くと苗が流されてしまって根が張れず、逆にあまりにも深く植え付けてしまうと分げつ(発育過程で新しい茎が出てくること)が阻害され、ここでも収穫量に響いてきます。

いざ全員で植え始めてみると、これが意外と難しい。深植えされた苗や浅植えされて水面を流れてくる苗、そしてまっすぐに植えているつもりでも気が付くと横の列にまではみ出しているなんてことも。

しかし作業を共にすることで一体感が生まれ、まるで皆が集落の住人であるかのようでした。素足や靴下のまま田んぼに足を入れた方に話を聞いてみると、土の中は意外と温かくて泥に包まれているような感覚だそう。どこか心地よく、自然に溶け込むように暮らしの一部分を体験されていました。

 

心配していた雨も作業が終わるころには止んでいて、雲の隙間から除く日の光と、山々から吹き降ろす風を気持ちよく感じながら、手作りの跡が残る圃場を皆で後にしました。

田植えをしたあとも苗の生育状況を見ながら圃場を管理したり、秋には収穫作業が待っています。これで終わりではなく、また帰ってきたくなる場所ができた日でした。

 

ただ訪れるだけでなく、自分が地域に関わることで場所を育てることができる感覚はなかなか味わうことはできません。住んではいないけど、住人の一人として帰ることができる場所が生まれていくことは、我々のNIPPONIA理念と通じるところがあると感じられた一日でした。

小栗 瑞紀

生まれも育ちも神奈川県横浜市。就職を機に篠山へ移住し、人生初の田舎暮らしを満喫中。株式会社NOTEに勤務。古民家が好き。