NIPPONIA協会が主催する「第1回NIPPONIAサミット」が、「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる ~歴史地区再生の最前線~」をテーマとして、約200名の参加のもと2019/11/8(金)開催されました。
午前の部では「NIPPONIAが目指すもの」をタイトルとして、株式会社NOTE代表取締役の藤原岳史と一般社団法人ノオト代表理事の伊藤清花が古民家再生を軸としたこれまでの歩みと今後の展開について語り、「NIPPONIA」が皆で創るムーブメントであるということを示しました。その一部をご紹介します。
(※以降、株式会社NOTE及び一般社団法人ノオトを「NOTE」として記載)
私たちが大切にする人、里山、その地域の方々の多様性、文化、暮らし、そういったものを繋いで未来に残していこう。そこから滲み出るものが、地域の資源ではないかということから始まった「人と里山大作戦」。
1棟を再生しても側から2棟が空き家になっていく。空き家が増えるスピードが速すぎてこれをどうしていくのが良いのか社会的な課題でした。同じエリアで点を繋いでいけば面になっていくという感触はあったのですが、それをどう表現していけばいいのか形になっていませんでした。
「日本には150万棟の古民家がある。全部が活用できる訳ではないが、2割の30万棟くらいは活用できるのではないか。それをNOTEの志として考えた方がいい。」とある人に言われた時、「30万棟ということは30年かかるとしても、毎年1万棟。 毎日30軒の竣工式が行われるということで我々の力だけではまず無理である。30万軒をNOTEだけではなく、みんなでやればいいのではないか。NOTEのやり方ではなく、地域で色々なやり方があってもいいのではないか。その骨組み、資金調達、改修方法、どうコストカットしていくかなどをシェアリングしていこう。それを色々な地域に広げていこう。」という方向へ転換してきました。
とは言っても、30年後にその仕組みができても古民家はなくなってしまう。完全になくなったものを再生することはできない。とにかくスピードが必要。そのために皆さまと手を組み、事例や課題に向き合い、解決するソリューションを生み出し、仕組みやムーブメント、運動を創ってきました。
10年前に「人と里山大作戦」と言っていたものが、「NIPPONIA」というムーブメントになりました。
「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる。」
この思想をキーセンテンスにして「NIPPONIA」の運動を進めていくこととなりました。本当の豊かさとは、誰もわからないけれど、これからの時代の日本の暮らしを思い描きながら再定義してきました。これが未来の豊かな国土づくりに繋がるのではないかと考えています。
「NIPPONIA」の使命として「私たちは、歴史的建築物の活用を起点に、その土地の歴史文化資産を尊重したエリアマネジメントと持続可能なビジネスを実践します。」というものがあります。私たちは面で、地域で展開していくということ、持続可能なビジネスにこだわっているということです。
さらにNIPPONIAの価値とはなんだろうと考えました。この数年で古民家ホテルは増えていて、流行っていると言われていますが、私たちがそれと何が違うのか。それは「郷にいること」というキーワードに凝縮されていると思っています。
私たち、NOTEのメンバーは地域の皆さまのサポート役で、主役は地域の皆さまであり、そこに皆さまがいるからこそ、こういう取り組みに価値があると思っています。それが「郷にいる」ということ。「郷にいる」とは、何をすべきか明確にしたのが以下でご紹介する「5つの約束」です。
●「LANDSCAPE 原風景の未来を創ります」
人の手が入ることで里山が作り出されています。里山の景観を残していくために、ランドスケープのことを考え、再創造していこうという想いです。●「COMMUNITY 関わる誰もが村人です」
移住者を含む住民を主役にして、コミュニティを構成していく。そこに滞在者や事業者、色々な人が関わっていくことを大切にしたいと考えています。●「ARCHITECTURE 文化財群を守ります」
古民家は文化財です。それを面で活用し、共に職人さんの技術なども継承していこうと考えています。●「CULTURE 食と生活文化を大切にします」
古民家という器の中には、人々が培ってきた生活文化があります。そこを大切にしていきたい、と考えています。●「ECONOMY 地域の営みを百年先に繋ぎます」
産業に繋げ、経済として成り立たせ、自走できるようにする、ということにこだわりたいと考えています。
この事業を通じて各地域に流れている歴史の深さ、私たちがもっと先のことを考えていかなければならないということを教えてもらいました。
NIPPONIAの事業を通して、繋がった大きなネットワーク。点の状態ではなく互いの顔がわかる関係性になろうとすることで、ネットワークの価値や強さが醸成される。こういうフェーズにきていると思い、皆さまに集まっていただきました。
年1回全国各地で取り組んでいる方々が集まる場を作り、その中で、各地で生まれた地域課題解決のスキーム、ノウハウを共有したい。また面白い人には、周りに面白い人が集まるので、直接繋がりあっていくことで何か面白いことが始まるのではないかと思います。
それは誰かが旗振りをするのではなく、自然と現場から上がって行くボトムアップの仕組みづくりにも繋がるのではないかと思っています。
このサミットを通じて、生まれていく知恵と工夫が「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らし」を創っていくと確信をしております。
午後の部では、5地域のプレーヤーが、地域の紹介から始まり、仲間やプロジェクト、今後の展開などについて各々に発表しました。
その後、株式会社AKINDのCEO岩野翼氏のファシリテートのもと、パネルディスカッションが行なわれました。日々活動する中で大事にしていること、悩みやノウハウを共有、それぞれの地域が持つ課題解決のヒントを探りました。
午後の部の様子は、後編にてお伝えしたいと思います。
荒木 志穂
大阪で働いていたが、結婚をきっかけに篠山へ。2013年一般社団法人ノオトに参画。家族が作ったお米と野菜がてんこ盛りの食卓と、通勤時間10分の清く正しい田舎生活を送る。アウトドアスポーツ大好き。