NIPPONIA協会主催「第1回NIPPONIAサミット」が開催されました(後編)

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なつかしくて あたらしい 日本の暮らし~歴史地区再生の最前線~

午後の部では、5地域のプレーヤーが、地域の紹介、仲間やプロジェクト、今後の展開などについて各々に発表しました。その一部をご紹介します。(前編はこちら

岐阜県美濃(みのまちや株式会社)NIPPONIA美濃商家町」

岐阜県で、名古屋の北側、位置的には日本の中心にある「美濃市」
清流長良川が流れる自然豊かな場所です。人口は約2万人、特産は美濃和紙。「うだつの上がる」素晴らしい町並みが残っています。
私たちの子ども、次の世代が住み続けられるような地域を作る、そのためには自立型、循環型の地域の持続可能な地域の経済モデルで廻していこうと考え活動してきました。

NIPPONIA美濃商家町」は、美濃市に寄与された物件の委託をうけ、丸重製紙とNOTEとの共同出資会社「みのまちや株式会社」で改修、運営しています。
夢でもあった和紙専門店「ワシナリー」とホテル機能を持つ複合的な施設です。
作り上げていく上で、地元を中心にたくさんの方に協力いただきましたが、特筆すべきは「タニマチ会」です。人もお金も足りない中、「ワークショップ」という形で、庭の芝敷き、床磨き、壁塗り、など行いました。
「タニマチ会」はホテルを作り上げる上で欠かせない存在であり、地域への愛を感じる存在です。

建物は、随所にこだわりが見られる京風の数寄屋造で、そこにある古いものを残しながら、新しいスタイルに落とし込むということにこだわって作り上げました。
障子はユネスコ無形文化遺産に登録された「本美濃紙」を貼っています。
ホテルの運営は地域住民が中心で、地元の人ならではのスタイルで、もてなしています。
通過型観光しかなかった美濃市に、今までにない形のホテルが誕生しました。
古くから残る町並みを生かし、そこにホテルなどを点在させていく「分散型ホテル」構想を、市と連携しながら横展開をしていこうと考えています。

楢山集落(福島県西会津町)

福島県の西の端で、新潟県に近い場所。西会津町のシンボル、高陽山の中腹にあり、中心市街地から30分ほどの距離にある楢山集落

その19代目でランドスケープデザイナーの矢部佳宏が、震災をきっかけに集落に戻り、アーティストインレジデンスや古民家再生による場づくりなどによって、新たな町の骨格づくりを行ってきました。
朝は通年で雲海が見える映画のロケのような雰囲気の楢山集落は、かつては里山や田んぼなどを含めた自然生態系と集落が持続可能な共生関係にあり、それが視覚的にも理解しやすい地形になっていました。
そして、そのような集落のエネルギー循環が「一つの惑星のようだ」と思ったところから、未来に向けて再びその循環を取り戻すプロジェクト、「楢山 プラネタリー・ヴィレッジ・プロジェクト」(惑星のような楢山集落)を立ち上げました。

このプロジェクトで重視しているのは、昔から普通にあったものを、形を変えて、伝えていく、繋いでいく、大地と人間の新たな関係性を紡いでいくということ。
建物は築約130年の農作業小屋をリノベーションし、室内でも地域の風景をアートやデザインで感じられるようなコンセプトで設計されました。

満月の宙を感じるような吹き抜けの部屋「十五夜-MITSUKINO-」には、アーティストが集落で昔使用されていた素材を使って裏の池で漉いた和紙で襖を制作。
脱衣室には、蔵の中にあった「にがり桶」を使用しています。
「聖-HIJIRI-」という名のお部屋は、近くにある山伏が修行していた岩窟堂の「籠る」雰囲気を生かしたデザインになっています。
130年前に建てられた壁や木の風合いをそのまま使っている蔵を改修したお部屋もあります。

このように、暮らしの営みから生まれた集落の文化を現代へとタイムスリップさせ、新しい文化へと高めていくということを大切にしながら、故くて新しい集落での暮らしを体験できる宿となっています。

山梨県小菅(株式会社EDGE)NIPPONIA小菅源流の村」

東京都の水源である多摩川上流に位置する山梨県小菅村。都心から車で約2時間ほどに位置する、標高約700メートル、人口約700人の小さな村です。

村内には約100軒の空き家がありますが、その空き家を客室や店舗として活用し、「700人の村をひとつのホテルに」というコンセプトで、事業を進めています。運営は全て村の住民が担います。

過疎化が深刻なこの村で、株式会社さとゆめは6年前から役場とともに、道の駅の立ち上げなど様々な施策を実施してきました。
これにより、観光客は2倍以上に増え、また毎年30人程度が減少していた人口も、ここ数年は下げ止まり、700人の人口の維持に成功しています。
一方で、観光客は日帰りが多く、その消費額や村との関与度合いも限定的です。
村に長く滞在してもらい、小菅村の歴史・自然・文化をより深く体感してもらうこと」「今ある空き家を使うこと」で、村が抱える問題を同時に解決できると考えました。

株式会社さとゆめ、株式会社NOTE、株式会社源(村が出資する会社)の3社で出資し株式会社EDGEを設立。
第一弾として、村の名士の細川邸(築約150年超)を4室の客室と22席のレストランに改修、2019年8月にオープンしました。
有難いことに、予想以上の反響があり、当初見込んでいたよりも多くのお客様に来村頂き、高く評価していただいています。
そして現在、続く第二弾として、崖っぷちに建つ2棟の古民家を1横貸しの客室として開発中です。

ホテルは、それを開発すること自体が目的ではなく、「村内から新たな動きを生み、人を惹きつけ、村の未来を創る」ことが目的であり、ホテルはそのために必要な仕掛けとして位置付けています。
ホテル開業後、様々なニュースや雑誌に取り上げて頂き「700人の村をひとつのホテルに」というコンセプトが外に出て、それに惹きつけられた多くの人々が村を来訪されています。

そういう意味では、ホテル自体が強力なメディアとして機能していると感じています。
そして、その世界観をお客さまと村人が共有することが、村の風景と暮らしを守ることに繋がると考えています。

和歌山県串本(株式会社一樹の蔭)NIPPONIA HOTEL 串本 熊野海道 Operated by subLime」 

本州の最南端に位置し、日本の”へそ”と言われる場所にある串本町。
その中でも串本の中心部はもともと海だったところに砂がたまり、陸になり町ができあがった「トロンボ」といわれる地形から成っています。

NIPPONIA HOTEL 串本 熊野海道 Operated by subLime」は、その”へそ”の”へそ”に立地します。
プロジェクトの始まりは、串本町に寄付された明治7年築の「稲村亭」(有形登録文化財)という物件。その昔の大飢饉の時、倉庫を開いて村の人々を助けた当主への恩返しとして贈られた巨木によって「稲村亭」の8畳と10畳の座敷を建造したという温かいエピソードがあります。

その「稲村亭」を含めた2棟3室で運営がスタートした「NIPPONIA HOTEL 串本 熊野海道 Operated by subLime」。レストラン、宿泊施設、カフェを株式会社subLime(現 we株式会社)が運営しています。

レストランはカウンターの目の前で地元の海の幸を使った原始焼きを提供。
また、もう1棟の「園部亭」という建物には受付兼カフェを併設。カフェは、古民家とボタニカの雰囲気があり地元の方からも人気で、特に高校生が毎日のように訪れる場所になっています。
宿泊施設には縁側、畳、お風呂、庭の4つが一体に感じられる部屋があり、それぞれの場所から庭を楽しむことができます。
星空も綺麗に見えプラネタリウムのようだと喜んでくれるお客さまもいました。

これらを活用した古民家の中には、すでに140年繋いできた人達の想いが入っていると改めて感じつつ活動しています。

熊本県甲佐(一般社団法人パレット/株式会社PALETTE)

人口10607人。世帯数4287世帯。九州のへそという場所で、熊本県の中央内陸部に位置し、熊本空港、熊本駅、九州自動車道からもアクセスのよい場所にあります。
町の中央に緑川という川が流れる、のどかな町並みと美しい山々、田園風景が広がる豊かな自然があり、山の恵みが豊富です。
魅力的な観光施設、通年イベントはあるが、宿泊施設がなく訪問者の滞在時間が短い。地域で使われるお金が少ないという課題もあります。

その町で、I・YOUスポーツ&カルチャークラブなどを通じてひとづくりの活動を行ってきました
また商店街の活性化を念頭に置いて、まちづくりの推進を行い、その中でNOTEとも出会いました。

改修予定の物件は、築130年の松永邸。川に反り立つように縁側が出て、川床のような体験ができる建物です。
NIPPONIAの運営を担うのは、株式会社PALETTEと株式会社NOTE九州で共同出資して立ち上げた株式会社Drawingです。

私たちのゴールはホテルの成功ではなく、甲佐町で子供を育てたい、暮らしたいと思ってもらえるようなまちづくり。
夏に開業予定のホテルをきっかけに地域の魅力を地域の方々と発信し、甲佐町ならではの面白い人、美味しいもの、楽しいことに関わることができ、また訪れたい、暮らしたいと、思ってもらえるような場所を目指します。

NIPPONIA施設やキャンプ場に泊まり、点が線になり、お客さまが回遊しながら町中が盛り上がっていく。町内施設と連動し、オープン予定の施設や空き家を活用しながら、滞在人口を増やし経済効果を生み、移住人口に繋げ、空き家バンクの活用、人口増加を目標にしています。


その後、株式会社AKINDのCEO岩野翼氏のファシリテートのもと、パネルディスカッションが行なわれ、日々活動する中で大事にしていること、悩みやノウハウを共有、それぞれの地域が持つ課題解決のヒントを探りました。

最後に、参加者全員が「NIPPONIAの価値観を共有する仲間であること、この場がNIPPONIAの活動を全国に広める場であることを確認し、「第1回NIPPONIAサミット」を閉会しました。


NIPPONIAサミット」はNIPPONIA協会が「全国における歴史地区再生の推進に向けて、会員および関係者における価値観と知見、ノウハウの共有を目的」として開催するものです。
関心を持たれた方はこちら(NIPPONIA協会会員募集のお知らせ)もご覧ください。

荒木 志穂

大阪で働いていたが、結婚をきっかけに篠山へ。2013年一般社団法人ノオトに参画。家族が作ったお米と野菜がてんこ盛りの食卓と、通勤時間10分の清く正しい田舎生活を送る。アウトドアスポーツ大好き。