町家の再生ストーリー
昨年の秋から工事が始まった三田市の町家が、この5月に3店舗が入る複合施設として、再び時を刻み始めた。
「旧大澤家住宅」と呼ばれるこの町家は、明治時代に建てられたものだ。家の正面は商店街として賑わっていた「本町通り」に面し、店舗としても、住居としても、立派に務めを果たしてきた。しかし、時が流れて住み手がいなくなると、家からは明かりが消えてしまった。
そんな「旧大澤家住宅」を改修し、町のにぎわいを生み出すスポットとして蘇らせようとする事業が、H29年度から始まった。そして遂にこの春、3店舗の新しいテナントが入り、家に再び明かりが灯されることになった。
新しいテナントのご紹介
早速、この大澤家に新しく入るテナントを順に紹介していこう。
◆オーガニック食品・コットン用品のショップ&カフェ「Bio table Saint an」
まずは1階の正面、本町通りに面しているお店は「Bio table・Saint an」(※読み方は「ビオターブル・サントアン」)。三田で20年以上店舗を構える老舗のケーキ屋「SAINT AN」が手掛ける、オーガニックにこだわった食品・コットン用品のショップ&カフェだ。オーナーの塚口さんは、「『丁寧な暮らし』にこだわったお店を作りたい」という想いを数年前から温めており、その思いを実現させたのがこのお店である。
カフェでは、できる限りオーガニックな食材や地元神戸三田産のものを使った、体に優しいランチやティーセットを提供してくれる。歴史ある古民家ならではの落ち着いた空間で、気付けばゆったりと長居してしまうこと請け合いだ。
野菜をたっぷり使った優しいランチ。(※季節によってメニューが変わるので写真と異なる場合があります。)
◆陶芸工房&ギャラリー「STUDIO PINAKO」
同じく1階、大通りに面したお店は「STUDIO PINAKO」。隠れ家のようなドアから入るのが特徴的だ。かつて子供部屋だった名残が今でも残っているこの空間は、オーナーであり陶芸家である古賀さんの、工房とギャラリーを兼ねた空間として生まれ変わった。古賀さん自身の作品の他にも、セレクトされた雑貨を扱うショップになっている。また、ギャラリーの隣の空間ではワークショップとしての場所貸しも行っており、ハーブブーケ作りやヨモギオイルのワークショップなど、魅力的なイベントも開催されている。
◆コワーキングスペース「OFFICE CAMPUS」
最後は、今夏オープン予定の2階のテナントを紹介する。2階は、コワーキングスペースとして生まれ変わる。畳張りだった和室はフローリングに変わったが、部屋の設えは当時のままだ。ビジネスマンの仕事場や、資格勉強がしたい人の勉強場所として、気軽に使うことができる。「ただ場所を利用するだけでなく、利用者どうしが繋がりあい、情報を交換したり、仕事仲間を見つけたりする場としても機能させたい」というのがオーナーの古家さんの狙いである。ぜひ、立ち寄ってみてほしい。
空き家となって眠っていた大澤家に、再び、人の声が戻ってきた。人の流れが生まれ、中庭から正面玄関へ、心地よい風が通り抜けていく。明治時代から紡がれてきた「旧大澤家住宅」の新しい歴史が、これから始まろうとしている。
小栗 瑞紀
神奈川県横浜市出身。NOTEへの就職を機に兵庫県丹波篠山市へ移住し、篠山での暮らしを満喫中。そろそろゴルフを再開したい。